![]() 2010
03/16 11:24 |
『呂氏春秋』 1 欲を適すCategory : 呂氏春秋の世界
![]() 中国の楼 自然観においても、人間観においても、 東洋的思想の方が、西洋的思想より優れていると言って来ましたが、 今日は、シナ古典の中で最も基礎的な、代表的な文献のひとつ、 原名は『呂覧』(りょらん)。 史記などが『呂氏春秋』(りょししゅんじゅう)と記しています。 『呂氏春秋』の世界の中を味わってみましょう。 現代の西洋文明の欲望の論理に慣れっこになっている私達に、 非常に新鮮で、目が覚めるような印象を持たれると思います。 猛春紀 (重紀) 町田版 春の節8から、 世之人主貴人,無賢不肖,莫不欲長生久視,而日逆其生,欲之何益? 「 世の人主(じんしゅ)、貴人、賢不肖(けんふしょう)と無く、 長生久視(ちょうせいきゅうし)を欲せざるなし。 而(しか)るに日に其の生に逆らう。之を欲するも何ぞ益せん。」 世の中の諸侯や貴族は、誰でも長生きを欲しない人はいない。 それなのに、それなのに、毎日毎日、 (彼らは)長生きができる生き方に逆からっている。 長生きをしたいと思っても、何にもならない。 猛春紀 おなじく 凡生之長也、順之也;使生不順者、欲也;故聖人必先適欲 「凡(おおよ)そ生の長きや之に順(したが)へばなり。 生をして順(じゅん)ならざらしむる者は欲なり。 故に聖人は必ず先(ま)づ欲を適(てき)す。」 寿命が長いという事は、内分泌機能、生理機能などの命の生の 働きに順に、自然に従って生きるおかげである。 これを妨げて不順な生き方をしてしまうのは欲望のせいなのだ。 だから、 正しい生き方をする人は、まず自分の欲望を適当に調節するのだ。 人間の正しい生き方とは何なのか、という場合、 自然に順って生きること、 命を全うすることであるというような言い方が、 呂氏春秋のなかにはあちこちに出てきます。 自然に順って生きる、その為には、まず、自分の欲を調整しなさいと。 自然に順う生き方とは、漠然とした言い方ではなく、 具体的に、『呂氏春秋』は、全体が十二紀に分けられ、 冒頭に「時令」として各月の太陽の位置、 南中する星々、 各月との五行の対応関係、時候、 天子の為すべき事、儀礼や政令、勧農などを定め、 それに順って人間も行動せよと説いています。 そしてこれらの政令に違反した場合には、災害が降ると警告しています。 前221年、秦の始皇帝が中国を統一します。 秦の宰相 呂不韋(りょふい)が、 秦の強大な国力を背景に、中国全土から有能の士を募り、 賓客として招聘し優遇しました。 その数は3000人にも達したそうですが、 その中から、 学問才識の優れた上客を選んで 聞き知っている事柄を記録をさせ作らせたものです。 それは全部で二十万語にも及ぶものでした。 その中の一字一句の欠点を指摘し、修正したら、 千金を与えると賞金を賭けて、 そのすべてを秦の都の市場の壁に張り出します。 とうぜん、誰も何の欠点も言って来なかったそうです。 これが前240年頃です。 欲を適す。 天と地という自然の巡りのリズムのなかで、 その運行をつぶさに観察をしながら、 自然の力を利用して農業を行いながら、 人間の欲望をうまく調節して、 天と地の間で、災害を抑え、 人が与えられた命を全うしていくための創意工夫が溢れています。 それが、中庸という東洋独特のすばらしい概念の芽生えです。 自然を人間に対する物体として扱わずに、 逆に、すべての生きている宇宙として捉え、 自然のエネルギーをどこまでも包摂して、我と一体になり、 どこまでも自らの内側に取り込んでいく。 自分の内側に、太陽を観じ、月を観て、宇宙を観る その静かなダイナミズムに、 いつも感嘆してしまうのです。 ”子ども手当て”で右往左往する今とは? お金を与えてどうにかできるという人間の生とは? 物質文明が国土にも心にもすっかり沁み込んでいる・・・ これを生命体である宇宙・天は、どうみるのか? 生に順った結果として潤沢な生が未来に約束されたのか? 人間の欲とみるのか? ならば将来、この場所からの排除の論理が働いてくるのか? 東洋より、世界へ 参考文献 : 「呂氏春秋」 町田三郎 講談社学術文庫 百家諸子 中國哲学書 -----------------------------------------*・・+"*☆★☆." 記事は無断転用なさいませんように、お願いします。 [一部、版権]がございます。権利は放棄しておりません。 どうぞ宜しくお願いします。
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Comment |
災害が降ると・・・恐いです!
ずっと最近、地震が多くて不安になっていた所です= 宇宙や、地球を生きているものとして考える東洋人の気持ちは私の中にもあります= もう、モノとして地球や自然を考える事を止めた方がいいですね= なんとかして西洋の物質文明の暴走を止めなければいけないと思います= 孝経に続いて『呂氏春秋』を学んでいきたいと思いました= 早春の宵に、まだ肌寒さを感じています。
昨夜は、新月でしたか? cosmosさんの影響で、自然や月を気にするようになったみたい~です。 >排除の論理が働いてくるのか? 自然淘汰の事でしょうか? Re: 災害が降ると・・・> 恐いです!
> ずっと最近、地震が多くて不安になっていた所です= > 宇宙や、地球を生きているものとして考える東洋人の気持ちは私の中にもあります= > もう、モノとして地球や自然を考える事を止めた方がいいですね= > なんとかして西洋の物質文明の暴走を止めなければいけないと思います= > 孝経に続いて『呂氏春秋』を学んでいきたいと思いました= ★そうですね! 強く共感していただきまして、本当にありがとうございます! 体と心で学んでいきましょうね~ いつも変わらぬご好意に感謝もうしあげます。 ありがとう。☆-------------------------------------:*・+*・’・*:.。☆.: Re: 早春の宵に、> まだ肌寒さを感じています。
> 昨夜は、新月でしたか? > cosmosさんの影響で、自然や月を気にするようになったみたい~です。 > > >排除の論理が働いてくるのか? > 自然淘汰の事でしょうか? ★気になりますか~? (笑い) もっと自然から、たくさんの物を学んでいきましょうね~ いつも変わらぬ友情に感謝申し上げます! ありがとう。☆-------------------------------------:*・+*・’・*:.。☆.: 「足るを知る」・・・ということでしょうか。
高校時代に中国の時代が地政学的に見て次に来る、 と言っていた世界史の先生を思い出してしまいましたが、 この時代の賢人たちが今の時代に存在していれば、 名実ともに素晴らしい中国になっているような気がします。 古典講義・・・嬉しいです! Re: タイトルなし> 「足るを知る」・・・ということでしょうか。
> > 高校時代に中国の時代が地政学的に見て次に来る、 > と言っていた世界史の先生を思い出してしまいましたが、 > この時代の賢人たちが今の時代に存在していれば、 > 名実ともに素晴らしい中国になっているような気がします。 > > 古典講義・・・嬉しいです! ★ ”中国の時代が地政学的に見て次に来る” その通りだと思いますよ~ その先生は、わかる人だったのですね! 詳しくは、またまた。このコメントのお返事を、次々回の記事で書かせていただきますね。 お楽しみに~~ (笑い)いつも変わらぬご好意感謝申し上げます。 ありがとう。☆----------------------------*・・+"*☆★☆." ここで良いのでしょうかインフォにコメントを頂いたので、書き込んでみています。コメントの仕方がまちがっていたらゴメンナサイ。
ハイキングを始めておられるとか、良いですね、元気に歩き回って鍛えて下さい。 後ほど、少しづつ読んでみますね。 Re: ここで良いのでしょうか> インフォにコメントを頂いたので、書き込んでみています。コメントの仕方がまちがっていたらゴメンナサイ。
> > ハイキングを始めておられるとか、良いですね、元気に歩き回って鍛えて下さい。 > > 後ほど、少しづつ読んでみますね。 ★あ、遠い所を、お越しいただいて!(笑い) 最近は、少しづつ歩いていますよ。 わざわざ、コメントいただきましてありがとうございます。 よろしければ、またお越しくださいね! |